この記事でわかること

  • 工業用水が向いている用途と向かない用途
  • 上水道・工業用水・自家水道の違い
  • 工業用水を検討する前に確認すべき契約・水質・BCPの論点
  • 自家水道と併用する判断基準

結論

工業用水は、工業用水道が整備されている地域で、かつ冷却水・洗浄水・ボイラー補給水など飲料水質を必要としない用途が多い工場では、上水道より有利になる可能性があります。

一方で、①利用できる地域が限られ、②水質は飲料水とは異なり、③導入時に大きな配管工事が必要、④また契約水量や将来の水需要の変動も契約締結が必要で、導入に検討が必要です。

経済産業省は工業用水道に関する制度・料金算定・施設更新指針などを公表しており、工業用水道は地域産業インフラとして運営されています(確認日: 2026年6月20日)。つまり、工業用水は「安い水」ではなく、地域・契約・用途が合う場合に機能する選択肢です。

飲料水や食品製造用水まで含めて水源を考える場合は、工業用水だけでなく、上水道や自家水道システムとの比較が必要です。


工業用水とは何が違うのか

工業用水は、主に工場の生産活動で使う水を供給するための水道です。上水道のように飲料水として使うことを前提にしたものではなく、用途は冷却、洗浄、ボイラー、製造用水、工程水などが中心です。

項目上水道工業用水自家水道
主な用途飲料、手洗い、製造、生活用冷却、洗浄、製造用水、工程水飲料水、製造水、BCP水源
水質水道水質基準事業体・契約により異なる用途に合わせて設計
利用地域全国工業用水道整備地域地下水取水が可能な地域
コスト逓増制で高くなりやすい条件次第で上水道比50〜80%削減目安条件次第で上水道比10〜30%削減目安
BCP長い配管の老朽化等で断水の影響あり供給網に依存独立水源として価値あり

工業用水がメリットを出しやすい条件

工業用水が合いやすいのは、次の条件が揃う工場です。

  1. 工業用水道の供給区域にある
  2. 冷却水・洗浄水・製造用水など非飲料用途の使用量が大きい
  3. 水質要求が工業用水の仕様で満たせる
  4. 契約水量が長期的に大きく変わらない
  5. 既存配管と受水槽の改造が現実的

特に、製品に直接触れない冷却系や設備洗浄系では、飲料水質までは不要なケースがあります。この場合、上水道を使い続けるより合理的なことがあります。

逆に、工業用水が難しいケース

次のような施設では、工業用水だけで全てを解決しようとすると無理が出ます。

ケース

注意点

食品製造水

導入時に浄水プラントが必要、

また水道水質基準や食品製造用水の保健所確認が必要

病院・ホテル

飲料にできないため、不適

工業用水道の供給区域外

接続できない、または工事費が重い

断水対策を重視

工業用水道も供給網に依存する

使用水量が将来減る

契約水量が負担になることがある

このような場合は、自家水道システムを追加し、上水道・工業用水・地下水を用途で分ける検討が現実的です。

自家水道と工業用水は競合ではなく併用できる

工業用水道が利用できる地域では、工業用水を非飲料用途に、自家水道を飲料水・生活用水・BCP水源に使う組み合わせも検討できます。すべてを一つの水源に寄せるより、用途別に分けた方が総コストとリスクのバランスを取りやすい場合があります。

例として、工場では次のように整理できます。

用途候補水源判断軸
冷却水工業用水、自家水道単価、濁度、スケール、安定供給
洗浄水工業用水、自家水道、上水道製品接触の有無
飲料・手洗い上水道、自家水道水道水質基準、保健所申請
BCP水源自家水道上水道・工業用水道停止時の代替性

契約前に確認する5項目

1. 供給区域と接続条件

工業用水道は地域インフラです。都道府県企業局など、管轄事業体に供給区域、接続可否、工事条件を確認します。

2. 水質仕様

濁度、鉄、マンガン、硬度、塩類、微生物管理など、用途に対して十分か確認します。必要に応じて追加ろ過や膜処理が必要です。

3. 契約水量

契約水量が固定的な場合、将来の減産や工程変更で水需要が減ると負担になることがあります。生産計画と合わせて確認します。

4. 既存設備改造

配管切替、受水槽、ポンプ、逆流防止、用途別配管の改造が必要になることがあります。水源単価だけでなく工事費も含めて比較します。

5. BCP価値

工業用水は供給区域内で便利な一方、災害時には供給網の影響を受けます。事業継続上、水源の二重化が必要なら自家水道も比較対象にします。

よくある質問

Q1. 工業用水は常に上水道より安いですか?\
A. 単価だけ見れば安い場合がありますが、接続工事費、契約水量、追加処理費、既存設備改造費を含めた総額で判断する必要があります。

Q2. 工業用水を飲料水として使えますか?\
A. そのまま飲料水として使う前提ではありません。飲料用途では水道水質基準に適合する処理と、必要な行政手続きが必要です。

Q3. 工業用水と自家水道はどちらが得ですか?\
A. 供給区域内で非飲料用途が大きいなら工業用水が有利な場合があります。飲料利用、BCP、水源分散まで見るなら自家水道も比較すべきです。

Q4. すでに工業用水を使っていても自家水道は検討できますか?\
A. 可能です。用途別の水源分けや、上水道部分の削減、BCP水源確保を目的に検討できます。

Q5. まず何を準備すればよいですか?\
A. 用途別の使用水量、現在の上水道・工業用水料金、所在地、既存受水槽・配管の情報を整理してください。

まとめ

  • 工業用水は、供給区域内で非飲料用途が大きい工場に向きやすい
  • 飲料水質、食品製造用水、BCPまで含めると工業用水だけでは足りないことがある
  • 判断は単価ではなく、接続工事・契約水量・追加処理・設備改造を含む総コストで行う
  • 自家水道との併用により、水源分散と上水道料金削減を両立できる場合がある

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参考資料

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