今回は、製造業の設備に多く用いられる熱交換器について、お伝えしたいと思います。

熱交換器とは

熱交換器とは、その名の通り異なる温度の熱エネルギーを効率的に移動、交換させる装置のことを指します。
チューブ状や板状の金属、樹脂などを介して、液体や気体を熱したり冷やしたりすることで、冷却、保温などさまざまな用途に使われます。

例えば、冷却した水を熱交換器に通すと、熱交換器の外側の空気は下がり、その結果温度(室温)が下がることになります。エアコンはこの仕組みを利用して、室温を上げたり下げたりしていますね。
この熱交換器は音もなく電源も必要ないので、地味で忘れられやすい存在ですが、実は性能上や省エネ上、非常に重要な役割を果たしています。そのため、熱交換器をきちんとメンテナンスする事で、プロセスの保全とともにコスト削減が可能となります。

熱交換器の種類

熱交換器の種類は、分類方法によって様々ですが、今回は「シェル&チューブ型」と「プレート型」の2種類をご説明します。

シェル&チューブ型

多管式とも言いますが、大きな缶体の中に何本もの細いチューブを通して、チューブの中と外の流体の熱を移動させる仕組みです。堅牢なので高圧に耐えますが、大型になります。

プレート型

何枚ものプレートをガスケット(気密性、液密性を持たせるために用いる固定用シール材のことです。運動用シール材はパッキンと呼びます)で挟み込んで、互い違いに異なる流体を流して熱を移動させます。プレートやガスケットの形状によって複雑な流れを組むことができ、コンパクトで高効率になります。
しかしその反面、高圧に弱いのと水が詰まり易いという欠点もあります。

熱交換器のメンテナンス

シェル&チューブ型

チューブ内に付着したスケールや泥・スライム等の微生物は熱交換能力を低下させます。
まずは、熱交換器のシェルを分解し、長いブラシを入れて洗う毛洗作業で洗浄しましょう。
しかし、それだけでは取れない固いスケールは、熱交換器に仮設配管と仮設ポンプ・タンクをつけて酸を循環させる薬品化学洗浄(定置洗浄)を行います。非常に危険な作業なので専門業者による作業が必要です。

なお、製造業でよく使われる開放型冷却塔を使用している場合は、チューブ内に外気から持ち込まれるスライム(微生物)が増殖したり泥などが堆積したりして、酷い場合はチューブを閉塞させてしまいます。
シェル&チューブ型は、沢山のチューブが使われており、1本のチューブが詰まっても他のチューブに水が流れる為、なかなかその現象に気づきにくいものです。普段から温度のデータを取り異変に素早く気付くことや定期的に開放点検を行うことが重要です。知らないまま稼働し続けることは、コストが上がる原因となります。

また、硬質なスケールが詰まりを発生させる事はまれですが、スケールは薄く付着しただけでも能力低下を起こすので厄介です。シリカ系スケールの場合は、1mmついただけで10%近くの電力ロスとなり非効率となります。よって、定期的な点検でその様な状態にない事を確認する事が、最も有効です。

プレート型

プレート型熱交換器は、上記の様な定置洗浄には不向きです。というのは、仮設ポンプで水を循環しても、プレート内部に異物があると全体に薬品が行き渡らないからです。

プレート型の場合は分解が比較的容易なので、全プレートを分解してメーカー工場に送り、化学洗浄・破孔チェック・ガスケット交換を行って、返送してもらうシステムが確立しています。これを行えば能力は新品の状態に回復し、万一破孔プレートがあればそれだけ新品に差し替えれば良いので安心です。現場作業はプレートの分解と組込作業だけですが、組込はメーカー技術者に依頼した方が無難です。

ただし、この作業には数週間かかるので、製造業として長期停止できない場合は予備プレートを購入する事をお勧めします。現場作業は1日で済み、同型の熱交換器が複数台あれば予備プレートは共用できるので、思うほどの出費でない事もあります。

水を中心としたコストダウンと省力化と防災対策

熱交換器の不具合による損害

熱交換器は色々な場所で使われていますが、こんな不具合は、熱交換器に原因がある可能性があります。
思い当たる方は一度、点検を依頼してみてはいかがでしょうか?

<空調・ビルメンテナンス業界>

  • 冷凍機の高圧が上がってきた。
  • 冷水が思うように取れない。
  • 電気代が高くなった。
  • 蓄熱槽の温度が下がらない。
  • 給湯温度が上がりにくい。
  • 蒸気が漏れてきた。

<工場・ライン>

  • 機械加工の高温エラーが頻発している。
  • 成形機の設定温度までの昇温が長い。
  • 高電圧のトランスが焼けて破損した。
  • 溶接機の冷却水が流れなくなった。
  • 焼入水の温度が下がらなくなってきた。
  • 圧縮空気の温度が上がってきた。
  • 塗料、洗浄ラインの水温が上がらなくなった。

<プール・温泉・スーパー銭湯>

  • 水張り後の昇温が遅くなった。
  • 源泉温度が低下してきた。
  • 水風呂の温度が上がってきた。
  • 温水プールの水温がなかなか上がらない。
  • ボイラーの水が漏れてきた。
  • お湯の循環量が少ない気がする。
  • 温泉補給が少なくなった。

<水処理工程>

  • RO透過水量が低下してきた。
  • 活性炭高温殺菌時間が伸びた。
  • 樹脂A再生中に温度エラーが出る。

以上、今回は熱交換器について記述いたしました。
参考になりましたでしょうか。
最後までご覧いただきありがとうございました。

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