春先に水質が不安定になるのはなぜ?

みなさまが普段口にしている飲料水。
蛇口を開けるだけで、当たり前のように手に入ります。

日本の水道水は世界的に見ても安定しており、安全性が高いと言われています。
多くの人が疑うことなく利用しているのではないでしょうか。

もちろん、水道水の水質は水道法によって厳しく規制されており、有害な水が供給されることはありません。
しかしその裏側では、水源の水質は日々変化しており、水道事業者によって安全が保たれているのです。

では、そもそもなぜ水源の水質は変化するのでしょうか。

水道水のもとは「自然の水」

水道の水源は大きく分けて、

  • 河川や湖沼などの「地表水」
  • 井戸や伏流水などの「地下水」

の2つに分かれます。

このうち、日本の多くの水道は河川水を中心とした地表水を主な水源としています。

地表水はなぜ変動するのか

地表水は雨水を起源としていますが、地表を流れる過程でさまざまなものを取り込みます。

例えば、

  • 土砂や濁り(濁度)
  • 落ち葉などの有機物
  • 細菌や藻類
  • 一部の生活排水

などです。
こうした影響により、水質は常に変動しています。

環境省の水環境に関する資料でも、河川の水質は流域からの流入負荷や降雨などの影響を受けて変動することを前提に評価・監視が行われています。
つまり、雨が降った後や流入が増えたタイミングでは、水質が変化するのは自然な現象と言えます。

(参考:水環境関係 | 水・土壌・地盤・海洋環境の保全 | 環境省

春先に水質が不安定になる理由

特に春先から初夏にかけては、水質が変動しやすい時期です。

その理由はいくつかあります。

① 水温上昇による微生物・藻類の増殖

気温の上昇とともに水温も上がると、藻類や細菌の活動が活発になります。

これにより、

  • 水の色が変わる
  • 有機物量が増える
  • 臭気(カビ臭など)が発生する

といった変化が起こります。

国土交通省や関連機関の湖沼・ダム水質に関する資料でも、水温が上昇すると植物プランクトン(藻類)が増殖しやすくなることが示されています。
例えば、水温が20℃以上になる時期には藍藻類が増殖し、水質障害の原因となることが報告されています。

(参考ダム・湖沼におけるプランクトン増殖(農林水産省・国交省系資料)

② 雪解け水による成分の流入(寒冷地)

雪国では、春先の雪解けによって一気に水質が変わることがあります。

  • 融雪剤(塩化カルシウムなど)
  • 路面に堆積した汚れ
  • 土壌中の成分

が河川に流入し、塩類濃度や濁度が一時的に上昇することがあります。

③ 渇水による水質悪化

春先は地域によっては降水量が安定せず、水量が減少することがあります。

水量が少ないと、

  • 汚濁物質が希釈されにくくなる
  • 有機物濃度が上がる

といった影響が出ます。

環境省の水質評価では、河川の水質は流域からの流入負荷や水量などの条件を含めて監視・評価されています。
また、国の調査では、河川流量が低下すると水質が悪化する傾向があることも指摘されています。
つまり、水量が減少する状況では、水質が悪化しやすいのは自然な現象と言えます。

(参考:水環境関係 | 水・土壌・地盤・海洋環境の保全 | 環境省

浄水場ではどう対応しているのか

こうした水質変動に対して、浄水場では常に処理条件を細かく調整しています。

例えば、

  • 凝集剤の注入量を増やして濁りを除去
  • 活性炭処理で臭気成分を除去
  • 塩素注入量を調整して消毒を強化

といった対応が行われています。

そのため、時期によっては「水が塩素臭い」と感じることがありますが、これは安全性を確保するための措置です。

水道水の消毒は、水道法に基づき義務付けられており、給水栓において一定濃度以上の残留塩素を保持することが求められています。
これは水道法施行規則により定められているもので、安全な水を供給するために必要な処理です。

(出典:厚生労働省 水道法第4条及び第22条等の関係について

最近は「安全+おいしさ」へ

近年は、安全性だけでなく「おいしさ」も重視されるようになっています。

  • 高度浄水処理(オゾン・活性炭)
  • 臭気対策の強化
  • 微量物質の除去

など、処理技術も進歩しています。

その結果、浄水器を使わなくても飲みやすい水を供給している地域も増えています。

地下水は比較的安定しているが…

一方、地下水は土壌によるろ過作用を受けるため、一般的に水質は安定しています。
しかし、まったく変化しないわけではありません。

地下水は地質の影響を強く受け、

  • 鉄・マンガン
  • カルシウム
  • シリカ
  • フミン質

などが含まれることがあります。

また、

  • 渇水
  • 地震
  • 地盤変動

などによって水質が変化するケースもあります。

東京都水道局でも、水の濁りや臭いの変化について、環境や設備要因による変動があることが説明されています。

(参考:水質について|よくある質問|東京都水道局

安定した水の裏側にあるもの

水道水は安定しているように見えて、
その原水は常に変化しています。

特に春先は、

  • 水温上昇
  • 藻類増殖
  • 雪解け
  • 流量変動

といった要因が重なり、水質が不安定になりやすい時期です。

それでも私たちが安心して水を使えるのは、
浄水場での継続的な監視と調整があるからです。

普段は意識しませんが、
蛇口の向こう側では多くの努力が積み重なっています。

当たり前に飲める水に、少しだけ目を向けてみてもいいかもしれません。

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