製造業や工場を経営されている皆さまの中には、「電気代をもっと削減できれば、収益をさらに伸ばせるのに…」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
とくに、老朽化した空調設備や機械をそのまま使い続けている場合、電気代が高くなるのは避けられません。

2025年現在、工場の電気料金は過去10年で平均20〜30%上昇。再エネ賦課金や燃料費の高騰が続き、製造コストを圧迫しています。さらに政府は2050年カーボンニュートラル実現を目標に、省エネ投資やGX(グリーントランスフォーメーション)対応を企業に求めています。

この記事では、工場の電気代削減に成功した最新事例と、今すぐ実行できる省エネ対策4選をご紹介します。

※本記事は、2018年8月24日公開の「今からすぐにできる!工場の電気代のコストダウン成功事例」をベースに、2025年版に再編集したものです。旧記事はこちら

 

工場の電気料金を下げた成功事例

工場の電気代を大幅に抑えたいならば、設備投資によるコスト削減が効果的です。しかし、まずはイニシャルコストがかかる設備投資の前に、電力会社の切り替えや照明器具など、すぐに実行できる電気代の削減方法から取り組みましょう。ここからは、電力会社の切り替えや照明器具の一新を行ったことで、工場の電気料金を下げた成功事例をご紹介したいと思います。

①電力会社を切り替える

2016年の電力自由化以降、法人向け電力会社は150社以上に増加。価格だけでなく、再エネ比率や時間帯別料金プランも選べるようになりました。
実は大規模工場や大型商業施設向けの「特別高圧」区分の電力自由化は2000年から、中小規模工場や中小ビル向けの「高圧」区分の自由化は2004年からスタートしていました。一般家庭でも自由化されたことで、「電力自由化」の認知度はぐっと上がりましたね。
電力会社を切り替えると、電気の質や電気の供給が止まるのでは?と不安な方もいるかもしれませんが、その心配はありません。切り替えた電力会社が万が一、倒産や撤退した場合は、元の電力会社に戻るのでリスクはありません。

工場での電気代削減事例として、コミックと書籍を生産するある製本工場の場合、電力会社を切り替えただけで年間約400万円の削減に成功しました。製造に携わる工場は、設備にかかる電力コストの削減が大きな課題なので、電力会社を切り替えたことにより、大幅なコストを削減が実現できたのです。
高圧電力の電気代を節約できたおかげで、製品の品質向上や設備投資にも資金を回すことができて、事業を発展させるためにも良い決断だったと言えます。

他にも、半導体製造装置に使用される部品を生産、流通している工場では、電気料金を見直して年間約130万円の電力代削減に成功してる例もあります。

法人向けに電力の提供をスタートした会社は100社以上あります。
自社の設備や工場にマッチした電力会社を選ぶことで、継続的な経費削減になるでしょう。

電力会社を切り替えるだけで大幅なコストダウンができるので、検討してみる価値はありますよ。

💡 ポイント
電気の品質や安定供給は変わらず、切り替えリスクは低い。比較サイトや専門コンサルで自社に最適なプランを選定可能です。

②省エネ空調とインバータ化による電気代削減

工場の空調設備や冷却ポンプは、古くなるほど効率が低下し、電気代の増加要因となります。特に15年以上使用しているパッケージエアコン(PAC空調)や定速運転のポンプは、省エネ性能が現行機種に比べて大きく劣るため、更新による削減効果が期待できます。実際、関西地方のある金属加工工場では、長年使用していたPAC空調を最新の高効率型に入れ替え、さらに冷却水ポンプをインバータ制御へと切り替えました。その結果、稼働効率が向上し、年間で約250万円、割合にして18%の電力コスト削減を達成しています。

また、設備の更新に加え、日常の運用改善も電気代削減に効果的です。例えば、夏は室温を28℃、冬は20℃に設定することで冷暖房負荷を軽減できます。さらに、遮光フィルムやブラインドを活用すれば直射日光による室温上昇を抑えられます。定期的なメンテナンスも重要で、年1回はフィルター清掃や冷媒ガス圧点検を行うことで、機器の性能を維持し、長期的な省エネ効果を確保できます。

③LED照明の導入とIoT制御

LED照明の導入はすでに多くの工場で当たり前となっていますが、2025年現在ではさらに一歩進んだIoT制御による照明管理が注目されています。人感センサーやスケジュール制御を組み合わせることで、必要な時だけ照明を稼働させ、不要な点灯を自動的に防ぐことが可能です。

工場のLED照明化のメリットは、

①電気代削減
②熱放出が少ないためエアコン代の節約になる
③長寿命による交換の手間が省ける
④赤外線や紫外線の放出が少ない

などが挙げられます。最近は、工場のLED照明化の促進のために高天井用LED照明や、LEDベースライト、LEDダウンライトなど選択肢が増えています。使用する箇所によって、最適なものを選びましょう。

工場のLED照明化の成功事例として。東北地方のあるスチール製品工場では、従来使用していた水銀灯700形を省エネ性能に優れたLED高天井照明に更新しました。加えて、IoTによる照明制御システムを導入し、休憩時間には自動的に減光する仕組みを構築。これにより、作業効率を損なうことなく電力消費を大幅に抑えることができました。その結果、年間で約120万円の電気代削減を実現し、さらに照明環境が改善されたことで、従業員の作業環境の向上にもつながっています。

④省エネ設備による補助金で負担軽減

2025年現在、省エネ設備の導入には最大で設備費の3分の2まで補助を受けられる制度が整備されています。代表的なものとして、経済産業省が実施する「省エネルギー投資促進支援事業」や、環境省の「地域脱炭素投資促進事業」などがあり、工場や事業所のエネルギー効率改善を後押ししています。

九州地方のある食品加工工場では、この制度を活用して初期投資額の50%を補助金でカバーしました。これにより、長年使用していたPAC空調と蛍光灯を省エネ性能の高い最新型空調機とLED照明に更新。設備更新に伴う消費電力の削減効果と、補助金による初期費用の軽減が相まって、投資回収期間は従来の約8年から4年へと半減しました。こうした補助制度を上手に活用することで、省エネ化とコストダウンを同時に実現できる好例と言えます。

省エネ型設備が対象となるかどうか、いくら補助金が支給されるかは、経済産業省・資源エネルギー庁の各種支援制度をチェックしましょう。

経済産業省・資源エネルギー庁:http://www.enecho.meti.go.jp/

▷ミズカラ株式会社の導入事例

まとめ

今回は、工場の電気代のコストダウン成功事例をご紹介しました。

2025年の工場経営では、電気代削減=利益向上+脱炭素経営です。
まずは契約見直しや運用改善で削減し、その分を省エネ設備投資へ回すことで、継続的なコストダウンが可能になります。

ぜひ、今回ご紹介した事例を参考にして効率的にコストダウンを実現させましょう。

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