地震、台風、水害——大規模災害が発生するたびに、上水道の断水は数日から数週間に及びます。あなたの施設は、その間も水を確保できますか。

2024年の能登半島地震では、断水が最長で3ヶ月以上続いた地域がありました。東日本大震災では、深度30〜300mの深井戸の95%が震災後も使用可能だったとの調査データがあります。

事業継続計画(BCP)において「水源の確保」は、電力と並ぶ最重要インフラです。受水槽の備蓄だけでは数日が限界。自家水道(深井戸)は、災害時にも枯れにくい独立水源として、多くの施設で導入が進んでいます。

本記事では、BCP対策として自家水道を検討する際に必要な情報を、判断基準とともに整理します。


この記事で確認できること

  • なぜ上水道の断水復旧は時間がかかるのか
  • 受水槽とBCP対策井戸の違い
  • 自家水道がBCPに有効な理由と限界
  • 停電時の対応(非常用発電機との組み合わせ)
  • 導入事例: 震災経験から導入を決めた病院
  • BCP目的での導入判断チェックリスト

上水道の断水はなぜ長引くのか

上水道は、浄水場→送水管→配水管→各施設という長い供給チェーンで成り立っています。このチェーンのどこか1箇所でも損傷すれば、下流の全施設が断水します。

災害断水規模復旧期間
能登半島地震(2024年)石川県内で最大約11万戸一部地域で3ヶ月以上
東日本大震災(2011年)最大約230万戸広域で数週間〜1ヶ月以上
台風19号(2019年)関東・東北で約14万戸数日〜2週間

自社施設の上水道は、災害時に「いつ復旧するか分からない」という前提で計画する必要があります。


受水槽だけでは足りない理由

多くの施設には受水槽(貯水タンク)がありますが、BCP対策としては以下の限界があります。

項目受水槽自家水道(深井戸)
備蓄量タンク容量に依存(通常1〜3日分)地下水脈から継続的に取水可能
補充上水道が復旧しない限り補充不可電源があれば取水し続けられる
水質劣化長期停滞で水質悪化のリスク常に新鮮な地下水を揚水
平時のコスト維持管理費のみ(削減効果なし)平時は水道料金削減に活用

📌 ポイント: 自家水道は「災害時だけの設備」ではありません。平時は水道料金の削減に使い、災害時には独立水源として機能する「二重の価値」を持ちます。


深井戸が災害に強い3つの理由

1. 地下水脈は地表の影響を受けにくい

深井戸(100m以深)は、地表の水道管の破損や汚染とは無関係に地下水を取水します。東日本大震災では、深度30〜300mの井戸の95%が震災後も使用可能でした。

2. 地下水は季節や気候に左右されにくい

地下水は地層に蓄えられた水であり、降雨量の短期変動による影響が小さい特性があります。渇水時にも安定した水量を確保できる可能性が高い水源です。

3. 供給チェーンが短い

上水道は浄水場から何kmもの配管を経由しますが、自家水道は自社敷地内で完結するため、外部インフラの損傷に影響されません。

⚠️ 限界: 自家水道は電動ポンプで揚水するため、停電時は単独では稼働できません。 BCP対策として実効性を持たせるには、非常用発電機との組み合わせが不可欠です。


停電時の対応——非常用発電機との組み合わせ

実例: 丸山荘病院様(茨城県)

東日本大震災を経験した丸山荘病院では、自家水道に加えLPガス非常用発電機を併設。停電時にもポンプを稼働させ、院内への給水を継続できる体制を構築しました。

構成要素役割
深井戸独立水源(地下水の取水)
浄水プラント飲料水質への処理
LPガス発電機停電時のポンプ電源
受水槽発電機起動までの一時貯水

LPガスは災害時にも供給が安定しやすい(都市ガスのように配管破損の影響を受けにくい)ため、停電+断水が同時発生する大規模災害にも対応可能です。


どの施設にBCP井戸が必要か

導入を優先すべき施設

施設類型BCP上の要件自家水道の価値
病院・医療機関患者の生命維持に水が必要。BCP義務化の流れ患者への飲料水・医療用水の確保
介護施設入居者の生活水・衛生水が不可欠断水時も入浴・食事・トイレが可能
食品工場生産停止は大きな経済損失生産ラインの継続
避難場所指定施設地域住民への水供給義務地域貢献とCSR

コスト面での判断

BCP目的での導入であっても、平時は水道料金の削減効果が得られます。月間上水道料金が100万円以上の施設であれば、BCP価値+コスト削減のダブルメリットで投資判断が成立しやすくなります。


BCP目的での導入を社内提案するために

社内で整理しておくべき情報

確認項目確認先
現在のBCP計画における水源の位置づけ防災・総務部門
受水槽の容量と想定備蓄日数施設管理部門
施設が避難場所に指定されているか自治体・防災担当
非常用発電機の有無と燃料種別施設管理部門
月間上水道使用量と料金事務・経理部門

提案時に使える判断フレーム

たとえば、ベッド数200床の総合病院でこの提案を組み立てるとこうなります。

【現状認識】
上水道のみに依存。受水槽は約2日分で枯渇する想定。近年の災害事例では断水復旧に2週間〜3ヶ月を要するケースがあり、現状のままでは患者の水分・衛生・人工透析の継続が困難。

【対策案】
深井戸(100m以深)+ 浄水プラント + LPガス非常用発電機を併設。地下水を独立水源として、停電下でも継続取水できる体制を構築。

【副次効果(投資回収)】
月間上水道料金 約180万円 × 削減率20%(病院の標準帯域)= 年間 約430万円のコスト削減効果。

【費用】
オンサイト方式なら初期投資ゼロ。削減分から月額の従量料金を支払う仕組みのため、稟議は「投資」ではなく「リスク低減+コスト削減の同時達成」として通せる。

▶ 自社の数字に置き換えてご利用ください。月間水道料金と病床数(または従業員数)が分かれば、社内提案の骨子が組み立てられます。


よくある質問

Q. BCP対策だけが目的でも導入できますか?

可能です。コスト削減メリットが小さい施設でも、BCP対策としての水源確保を目的に導入するケースがあります。この場合、コスト面の投資判断は「保険としての価値」で検討することになります。

Q. 震度7クラスの地震でも井戸は使えますか?

東日本大震災(最大震度7)では、深度30〜300mの井戸の95%が使用可能でした。ただし、極めて稀なケースで地盤変動により水量が変化する可能性はゼロではありません。複数水源の確保が理想です。

Q. 井戸の設置スペースはどのくらい必要ですか?

プラント全体で駐車場5〜6台分(約25m²)。分散配置も可能なため、まとまったスペースがなくても検討できます。


次のステップ

BCP対策としての自家水道導入を検討されている場合は、まず現在のBCP計画と水道データをご準備の上、無料の事前診断をご利用ください。

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