今回は、上水道料金の削減とBCP(事業継続計画)対策を両立させた方法を、当社の実際の導入事例に基づいてご紹介いたします。
某大手食品会社様の工場での事例です。
目次
1.新工場建設時の”水”に対する総合的なコンサルティング
今回は、当社が実際に納入のお手伝いをさせていただいた食品会社様の工場での導入事例をご紹介いたします。
こちらの食品会社様は、関東で1960年代に創業された老舗の食品メーカーです。
首都圏を中心に複数の工場を稼働されており、コンビニエンスストアやコーヒーチェーンに、様々な商品を出荷されています。
おそらく、皆さまも一度は知らず知らずのうちの口にされている商品も多いでしょう。
当社は数年前より、こちらの食品会社様の4つの工場の水処理設備のメンテナンスを担って参りましたが、
製造数が増えたことに伴い、新工場建設の計画が持ち上がったため、お声を掛けていただきました。
新工場は、今まででも最大規模クラスの工場となるため、
水をはじめとする電気・ガスといったランニングコストが非常に高額となる計画です。
また、確実にお取引先様へ出荷をする必要があり、24時間365日”停止できない”施設となっています。
ところで、様々な工場の中でも食品工場は、特に水の使用量が多い業態です。
例えば、
- 食材の洗浄
- 冷凍食品の解凍
- 調理水(煮る、蒸す、茹でる、炊飯など)
- 食品そのものへの含水
- 機器類の洗浄、冷却
- 従業員の方の作業毎の手洗 などなど
この全てを上水道で賄うとなると、施設運営にかかる水道料金は非常に高額となります。
そのため、新工場では井戸を掘削し地下水をメインに使用する計画となっていました。
そこで、既に他の工場の水処理設備のメンテナンスを行っていた当社にも、提案のご依頼を頂いたというわけです。
2.リスク回避で見えないコストダウン とにかく”水”を止めない提案を
もちろんこちらの食品会社様は大手企業様ですので、当社だけではなく数社にお声がけをされており、
いわゆる”設計プロポーザル”の様相を呈していました。
水道料金をはじめとするランニングコストの削減は絶対条件ですが、それだけでは十分条件に成り得ません。
お客さまにとってコストダウンと並んで重要なのは何か・・・?
それは、”水を止めないこと”だと定義しました。
そこで、本来当社の所掌外ではありますが、上水の配管口径にまで言及した提案を行いました。
こちらの食品会社様では当初、井戸をメインとして使用することから
上水の配管口径を限りなく小さくされることを予定されていました。
配管口径を小さくすれば、水道料金の基本料金が抑えられるためです。
例)千葉県営水道の基本料金
最小と最大の差異
口径 13mm 418円
口径 300mm 1,129,700円
確かに、配管口径を小さくすれば、上水道の基本料金を抑えることが可能となり、
一見すると水道料金の削減に成功するかに思えます。
しかし、適切な口径の配管を敷設していなければ、万が一、井戸やろ過装置に不具合が発生した場合、
バックアップとしての上水(市水)が不足してしまい、結果的に工場稼働そのものにまで影響を及ぼしてしまいます。
特に水の使用量が多い食品工場において、水が止まることは工場が止まることと同じです。
工場稼働停止は出荷停止を意味し、思いもよらない二次被害コストが発生します。
3.”水を止めない”仕組みの構築
もちろん、井戸とろ過設備に関しても”水”を止めない”ことを念頭に置き設計しました。
24時間の遠隔監視システムの導入に加えて、ろ過装置をあえて2系統にすることで故障リスクを半減させたのです。
これは、大企業の航空機による移動で、複数いる役員があえて別の便を使用するのと同じ発想です。
井戸を複数本掘削し、ろ過設備を全て2台づつ用意することで、
万が一のトラブルの際にも残る片方で運転できる。
また、両系統とも故障してしまった場合でも、今度は上水のバックアップが入ることで、とにかく”水を止めない”提案といたしました。
”水を止めない”リスク回避により、工場停止の防止、ひいては二次被害コストの防止の提案を評価していただき、
お客様から第一交渉権を獲得することができたのです。
4.オンサイトご契約による初期投資費用の削減と導入リスク回避
この段階では、まだ井戸とろ過装置については”お買取り”されるのか、
それとも1㎥あたりのお支払いとなる”オンサイト方式”でご契約されるのかが決まっておりませんでした。
当社は以下の理由により、”オンサイト方式”をお勧めしています。
・初期投資が不要
通常数千万円かかる井戸掘削、濾過設備の購入、設置工事代金等の初期費用が不要となります。
・導入リスクゼロ
オンサイトご契約締結後の井戸掘削では、必要な水量が得られなかった場合当社費用にて現状復帰致します。
掘削に要した費用も頂きません。
一方で、井戸をご購入(設備投資)される場合には、必要水量が得られなかった場合でも、お客様のリスクとなってしまいます。
・経理処理の簡略化・オフバランス化
設備は当社が保有するため、会計管理の考え方に準じ、バランスシート上での資産計上が不要となり、財務健全化による企業価値向上効果も期待できます。
事例の食品工場様は今まで、設備をオンサイト方式で導入されたことがありませんでしたが、
上記メリットを一つ一つ丁寧にご説明いたしました。
今回の新工場では複数本の井戸を必要とするため、井戸の掘削費用だけでも相当費用がかかり、
もし、必要とする水量が得られなかった場合のリスクが非常に高いのです。
最終的にはオンサイト方式によって導入リスクを無くせる点を高くご評価頂き、
某食品会社様として、初めてオンサイト方式にてご採用頂くこととなりました。
5.軟水器の導入で〇〇が美味しくなる??オンサイト方式であれば設備増強も数円単位
ところで、この新工場では日本人の食卓には欠かせないある食べ物に、特に力を入れていらっしゃいました。
詳細は、企業秘密に該当するため明かすことができないのが残念ですが、
専門のフードコンサルタントの方がいらっしゃるほどで、
美味しくするための技術の研究を、徹底的に行っていらっしゃいました。
含水率の高いその食品を美味しくするためには、やはり”水”が重要であり、
当社も早い段階から要求水質に関してのご相談を受けておりましたが、
工場で使用する全ての水量を要求水質で提供するにはランニングコストがかかりすぎてしまうため、
解決方法に頭を悩ませました。
諸々検討の結果、工場全域にご提供する飲料ラインから分岐させ、
該当する食品製造ラインに向けて専用水を別途提供することとしました。
この方法であれば、その食品製造ラインのみ要求水質を満たせばいいので、ランニングコストが抑えられます。
但し、個別に水処理設備を増設することとなる為ため、従来の方法では設備投資費用がさらに数百万円ほど嵩んでしまいます。
しかし、今回はオンサイト方式でのご提供です。
そのため、数百万円のコスト増は、ご提供する1㎥当たりの単価に述べて計上が可能です。
仮に、その食品を美味しくするための整備投資が500万円であったとします。
新工場の予定使用水量は年間240,000㎥です。
オンサイト契約期間は10年間なので、契約期間中の総使用水量は2,400,000㎥となります。
設備投資費用は500万円を、2,400,000㎥で割り返すと、1㎥あたり2円となります。
この様にオンサイト方式でのご採用では、お客様の要望で設備増となった場合でも、
ご提供できる単価にすれば安価な価格の上乗せで、無理なくご提供することが可能となります。
まとめ
当社の実際の事例をもとに、工場における水道料金削減とBCP対策(断水対策)の実現について、ご説明いたしました。
POINT
- 自社が提供できる範囲だけではく、工場全体の”水”に関する総合的な提案を実施
- ”水を止めないこと”を最重要課題として、徹底したリスク回避策を盛り込む
- 遠隔監視に加えて、システムの二系統化と100%上水バックアップにより、断水による工場停止を徹底回避
- オンサイト方式によるご契約で初期投資なし・導入リスクゼロで導入
- 食品を美味しくするための設備の増強を実施、オンサイト方式につき追加投資も発生せず1㎥あたり数円の値上げで完了
こちらの食品工場様では、現在も安定的な水の供給を実施しており、
その分水道料金の大幅な削減も享受されております。
今後も水を止めることのないよう、丁寧なメンテナンスや遠隔監視システムからの情報に基づいた事前のトラブル回避に努めたいと思います。