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水処理・空調・配管設備の視点から考える
エネルギー価格の高止まりが続く中、設備の運用方法そのものが、企業のコスト構造に与える影響は年々大きくなっています。
特に冬季は、暖房負荷の増加や外気温低下による熱損失の影響を受けやすく、同じ設備でも運転条件次第でエネルギー消費量に差が生じやすい時期です。
一方で、多くの設備は年間を通じ、安全面を最重要視した条件で運転されており、冬季特有の負荷の変化が十分に反映されていないケースも少なくありません。
その結果、設備は安定して稼働していても、エネルギーが過剰に消費されていることがあります。
本記事では、水処理・空調・配管設備を中心に、冬季の負荷特性を踏まえた運転条件の見直しによって、省エネルギー効果を引き出すための考え方を、実務と経営の両視点から整理します。
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冬は「自動運転=最適運転」ではなくなる
多くの設備は自動制御で運転されていますが、その制御条件は「年間を通じた安全性」を前提に設定されていることが一般的です。
その結果、冬季になって負荷が下がっても、夏季と同じ運転条件のまま設備が稼働し続けているケースが見受けられます。
最大負荷を前提としたポンプ・ファン運転
外気温や水温低下を反映しない設定
冬季でも余裕を持たせ過ぎた運転
こうした状態では、設備稼働は安定していても、エネルギーは無駄に消費され続けます。
冬季は負荷条件が変化するため、「自動運転=最適運転」とは限らなくなる点を意識する必要があります。
水処理設備で見直したい冬の運転条件
循環量・ブロー量は冬に合っているか
水処理設備では、冬季になると以下のような変化が起こります。
蒸発量の低下
水温低下によるスケール・腐食条件の変化
微生物活性の低下
それにもかかわらず、夏季と同じ循環量やブロー量で運転していると、ポンプ電力や補給水量が過剰になっている可能性があります。
水質を監視しながら、冬季に応じた循環量・ブロー量へ調整することで、
設備の安全性を維持しつつ、省エネ効果を得られる場合があります。
薬品注入量は「年間一定」になっていないか
水処理薬品の注入量も、運転条件見直しのポイントです。
冬季は微生物の増殖が抑制される傾向があり、反応速度も低下します。
そのため、年間を通じて一定量を注入している場合、
冬季は必要以上の薬品を使い続けている可能性があります。
薬品使用量の最適化は、
薬品コストの削減
薬注ポンプの消費電力低減
排水負荷の低減
といった複合的な効果につながります。
省エネルギーセンターでも、設備更新だけでなく運転管理の改善が省エネに有効であると示されています。
空調設備における冬季省エネの考え方
設定温度よりも「運転方法」に注目する
冬の省エネ対策として、設定温度の引き下げが注目されがちですが、
快適さを損なう対策は現場に定着しにくいのが実情です。
一方で、次のような運転方法の見直しは、快適さを維持しながら省エネにつながります。
低負荷時のファン・ポンプ回転数の見直し
非稼働時間帯の惰性運転停止
外気条件を活用した運転切替
環境省の資料でも、事務所や商業施設などの業務用建物では、熱源・給湯・空調関連設備が主要なエネルギー消費用途であることが示されており、
運転条件の最適化が省エネルギー効果につながる余地があると考えられます。
結露対策と省エネは両立できる
冬季は結露対策として、必要以上の加温や送風が行われているケースも見られます。
しかし、結露の発生要因は主に、温度差・湿度・空気の滞留といった要素に分解して考えることができます。
国土交通省が定める「建築設備設計基準」では、配管や設備の断熱・保温は、凍結防止のみを目的としたものではなく、熱損失の低減や設備全体のエネルギー効率向上を図るための基本的な設計要素として位置付けられています。
この考え方に基づけば、断熱の補修や保温性能の確保、あわせて空気の流れを整理するなどの基本的な対策を行うことで、エネルギー消費を増やすことなく、結露リスクを低減できる場合があると言えます。
参考:国土交通省 官庁営繕部「建築設備設計基準(令和6年版)」
大規模な設備投資を伴わずに効果が出る省エネ施策
冬季の省エネ対策の特徴は、必ずしも大規模な設備更新を行わなくても、一定の効果が期待できる点にあります。
例えば、
運転条件の見直し
適正な停止判断や負荷調整
配管・機器の保温や断熱といった基本管理
これらは、新たな設備投資に比べて、既存設備を活用しながら比較的早期に着手できる対策です。
もちろん、検討や調整には時間と労力が必要ですが、
戦略的に運転条件を見直すことで、エネルギー消費の削減だけでなく、
設備の長寿命化やトラブルリスクの低減といった副次的効果も期待できます。
省エネは「設備」より「運用の考え方」で差がつく
冬の省エネ対策は、特別な技術や高額な設備を導入することだけが解決策ではありません。
今の負荷に対して過剰な運転になっていないか
季節ごとに運転条件を見直す仕組みがあるか
停止・低負荷運転の判断基準が明確か
こうした運用の考え方が、省エネ効果を大きく左右します。
まとめ:冬は運転条件を見直す好機
冬季はエネルギー消費が増えやすい一方で、
運転条件の見直しによって省エネ効果を得やすい季節でもあります。
水処理・空調・配管設備において、
循環量や薬品注入量
運転方法や停止判断
保温・断熱といった基本管理
を見直すことで、大きな投資をせずとも改善につながる可能性があります。
省エネは「我慢」ではなく、「考え方の整理」から始まります。
冬である今こそ、設備運用を一度見直してみてはいかがでしょうか。
お気軽にご相談ください。



