近年の度重なる集中豪雨、台風などによる甚大な水害が発生することにより、一般家庭での生活環境の停滞のみならず、企業活動の経済損失が危惧されています。
そこで従来のBCP(事業継続計画)に加え、水害に特化した”水害版BCP”を設けることにより、企業生命に関わる浸水によるリスクに特化したリスクマネジメントの必要性が叫ばれるようになってきました。
ここでは水害版BCPを作成するにあたり、企業の浸水被害による事業活動が危機に瀕したことを想定した水害の現状、及びその対策を明確にし、BCP作成の具体的手順に触れていきます。
目次
水害で考えられる被害とは
まず取り上げられることは、1階に位置しているオフィスや工場など、地面に面している部分への浸水です。この浸水被害として挙げられるのは、人的損失と物的損失とがあります。人的損失には社内の指揮系統の喪失や取引先との業務の停止などがあり、物的損失としては、機器や紙媒体の文書、電子上のデータなどが考えられます。
機器の損害
オフィスや工場内で床上浸水が発生すると、床面に設置しているサーバーや製造機器が水に浸かり故障します。特にオフィスの場合、サーバーやルーター、ハブなどが水に浸かることでサーバー本体の故障だけでなく、ルーターやハブの不具合により、クライアント端末のLAN接続不可が発生します。
工場施設の場合、深刻なことは機械設備の基盤や配線部分にまで浸水することです。とりわけ海水が混じっている場合、塩分により電気系統が腐食し、修理に半月以上かかることもあります。その間生産がストップしてしまい、事業生命に関わってくるでしょう。
重要データの損失
床上浸水によってサーバー等に電源が入らなくなり、社内外のデータへのアクセスが不可能となって社内の基幹業務が停止に追い込まれることもあります。また、仮にサーバー内のハードディスク自体は浸水被害を免れていても、本体搭載のマザーボードなどの故障により、本体とハードディスクの規格上の組み合わせが他にない場合、データを失うことになってしまいます。(例として本体、ハードディスクともに古いIDE規格の場合)
また重要データは電子媒体にとどまりません。重要データが契約書や発注書などの紙媒体で、ファイリングされて床に置かれた状態で浸水被害にあった場合を想定してみましょう。紙は一度濡れてしまうと原状復帰することが難しいだけでなく、水に泥が含まれていることが原因となって、後に紙面が泥混じりで判別できなくなってしまいます。
業務および取引の停滞
浸水による被害は自社内だけにとどまりません。顧客や仕入先が同様に被害に遭うことで、納品や仕入れができなくなることもあります。また、物理的な商品のやりとりでは、商品搬入に必要となっている道路の浸水や、物流業者の業務停止による物流ストップなどサプライチェーンにも影響が生じます。
さらに、ソフトウエア開発においても、大規模プロジェクトに参画している協力会社が被害に遭うことで、各モジュールの提出が滞り、結果として全体の開発に遅れが発生します。この被害は開発側だけでなく、インテグレーターにも関わってきます。例えば、ソースコード共同開発管理用サイトがダウンすることで、プログラムがオンラインで納品できなくなる被害も起こりえます。
従業員の出勤不可
水害だけでなく自然災害全般に言えることですが、必ずしも企業の稼働日に発生するとは限りません。深夜や休日などの社員不在時に発生した場合、経営者や管理者、従業員が交通マヒにより会社に出勤できない状況も出てきます。会社自体が物理的に被災していない場合でも、人的要因で業務停止に追い込まれることもありえます。
企業が取るべき対策
水害に際して企業が取るべき対応には「事前対策」、「初期対策」、「応急対策」の3つの対策があります。中でも企業が取るべき対応として、割合を大きく占めるのは「事前対策」です。ここでは企業が取るべき「事前対策」についていろいろと触れていきます。
データのバックアップ
データの定期的なバックアップは水害に限らず、地震や停電時に企業が業務停止になるリスクを抑えます。企業がとるべき事前対策として、サーバーにあるデータは定期的に外付け媒体にバックアップすることです。常時稼働のサーバーの場合には、バックアップソフトによる日々定刻の自動バックアップを利用するとよいでしょう。
なお、バックアップ元となるサーバーも、床上浸水する可能性が低い上階に移動して、機器故障のリスクを抑えることで、バックアップ先のデータをソフト上で速やかに復元できることが大切です。基幹業務に関わることのない資料程度のデータであれば、クラウド上に保存することもひとつの方法です。
保険の加入
水害によって被る機器の故障においては、あらかじめ損害保険に加入することで対処することが可能です。故障した機器の修理費をカバーするタイプの保障ではなく、代替機が手配できる保険の方がよいでしょう。
またPC端末やサーバー等では、中にあるデータの損失の方が大きいため、機材を保障するものよりは、被災時の業務停止を保障するものを選びます。事業保障資金を確保する保険がそれに該当し、万が一の場合には法人の資産として保険金が適用されます。これは大概的な信用を維持することが可能なタイプであり、万が一のときに事業保障される保険です。
浸水時の準備、備蓄等
企業のとるべき事前対策には、浸水後の被害を前提としたものだけでなく、浸水を物理的に食い止めることも必要となります。普段から事務所や工場内に浸水対策グッズを保管しておき、浸水の危険に到達する前に対処できることが望ましいでしょう。浸水対策グッズとしては、土嚢、止水板などがあります。これらを活用することで限定的ではありますが、浸水を食い止めることができます。
災害用資金の確保
事業中止に追い込まれた場合に問題となるのが資金繰りです。仕入先が被災し、緊急で確保した代替の仕入先の場合、支払いが前金の可能性が多いため、日頃から資金をプールし、資金ショートに備えることが大切です。
避難情報、ハザードマップの把握
就業中の浸水被害のケースに備え、あらかじめハザードマップを確認しておきます。消防の避難訓練のように朝礼などを利用して、ハザードマップを定期的に従業員の間で確認し合うことが大切です。
BCPの作成方法
水害版BCPの作成においては、国土交通省-九州地方整備局の武雄河川事務所のサイトで公開されている「水害版事業継続計画(BCP)作成支援」(後述の引用URLを参照)を利用するとよいでしょう。クイックスタートガイドから作成手引き、さらに作成のためのワークシートがPDFの形で提供されています。
《引用》
水害版事業継続計画(BCP)作成支援
http://www.qsr.mlit.go.jp/takeo/tiikibousai/kigyou/bcp.html
まとめ
水害は企業にとって事業生命に関わるほど甚大な被害をもたらします。そのため、BCP作成によるリスクマネジメントが必要不可欠です。予め最悪の事態を想定した水害の被害状況を洗い出し、その対策も踏まえた上で、BCP作成に取り掛かりましょう。そうすることで、少しでも企業活動が停滞しないよう取り計らう備えることが必要です。
第二水源の確保はBCP対策にも有効
ミズカラ株式会社(旧:アクアテクノシステムソリューションズ株式会社)では、断水対策はもちろん、水処理全般のご相談を承っています。
「水道料金のコストダウン」「防災対策」「BCP対策」「メンテナンスの省力化」などのご相談に対し、それぞれのお客様へベストソリューションをご提供いたします。
「イニシャルコストをかけずに経費削減したい」
「リスクなくコストダウンを実現したい」
「水処理設備の効率化をはかりたい」
「労務費削減、省力化について相談したい」
「プロの診断を無料で試したい」
などのお悩みはございませんか? お気軽にお問い合わせください。