水道料金は、製造業における大きな間接コストの一つです。工場の経営者や担当者であるあなたは、工業用水道の料金体系について充分理解しているでしょうか?
上水道料金と比較すると、1㎥あたりの工業用水料金は安価です。しかし工業用水道の料金体系は、私たちに馴染み深い一般家庭用の水道料金とは仕組みが異なるため、使い方によっては非効率でロスが多くなってしまう場合があります。
今回は、工業用水道の料金体系の要点をわかりやすく説明した上で、さらに工業用水道を活用したコストダウン方法をご提案します。
この記事を読めば、工業用水道を使用する際に必ず知っておくべき知識を身につけ、水道料金コストの節約に取り組むことができます。ぜひご一読ください。
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1.工業用水道とは
工業用水道事業法において、工業用水は以下のように定義されています。
この法律において「工業用水」とは、工業の用に供する水(水力発電の用に供するもの及び人の飲用に適する水として供給するものを除く。)をいう。この法律において「工業用水道」とは、導管により工業用水を供給する施設であつて、その供給をする者の管理に属するものの総体をいう。この法律において「工業用水道事業」とは、一般の需要に応じ工業用水道により工業用水を供給する事業をいう。
また、工業用水の使用水量・補給水量・回収率の多い業種はそれぞれ以下の通りです。
使用水量
業種名 |
---|
化学工業、鉄鋼業 |
パルプ・紙・紙加工品製造業 |
補給水量
業種名 |
---|
パルプ・紙・紙加工品製造業 |
化学工業 |
鉄鋼業 |
回収率
順位 | 業種名 | 回収率 |
---|---|---|
1 | 鉄鋼業 | 90.4% |
2 | 輸送用機械製造業 | 89.1% |
参照:平成28年経済センサスー活動調査 産業別集計 製造業 用地・用水編 – 経済産業省(読みやすいように一部改変)
このように、業種によっては大量の工業用水が必要であり、90%以上の水を循環して利用する業種もあることがわかります。
2.工業用水料金の仕組み
工業用水道の料金体系は、一般家庭用の上下水道とは大きく異なります。最も異なる点は、工業用水道の多くが二部料金制をとっている点です。
工業用水料金は、①事前に申請した水量(基本使用水量)によって決まる基本料金と、②実際に使用した水量(使用水量)に応じた使用料金 の合算によって決まります。
さらに、②使用水量 が ①基本使用水量 を上回る場合、超過分の水量に対しては、超過料金が適用されます。
参考:大阪水道事業団ホームページ(読みやすいように一部改変)
工業用水道料金の基本用語
工業用水道で扱う水量の種別
名称 | 概要 | 備考 |
---|---|---|
基本使用水量 | 利用に当たって申し込まれた水量(日量) | 最低申込水量は30立方メートル/日 |
使用水量 | 実際にその月に使用された水量のうち、超過水量を除いた水量 | – |
超過水量 | 単位時間当たりの基本使用水量を超えて使用された水量 | – |
工業用水道で扱う料金の種別
名称 | 概要 | 備考 |
---|---|---|
基本料金 | 基本使用水量にかかる料金 | 基本使用水量 × 基本料金単価 × その月の日数 |
使用料金 | 使用水量に応じた料金 | 使用水量 × 使用料金単価 |
超過料金 | 超過水量に対する料金 | 超過水量 × 超過料金単価 |
参考:大阪水道事業団ホームページ(読みやすいように一部改変)
工業用水道料金の特徴
工業用水道料金の特徴としては、以下の2点が挙げられます。
ひとつは、基本料金と比べ超過料金が高く設定されている点、もうひとつは、途中の基本水量の変更や解約が難しい点です。
そのため、あらかじめ使用水量を多めに設定し、超過料金が発生しないよう余裕を持って契約するケースが多く見受けれます。つまり、契約する水量に対し、実際に使用する工業用水が余るということです。
3.工業用水道料金の相場とは
それでは実際に、工業用水道料金を確認してみましょう。
工業用水は個別契約に近いので、条件はバラバラで料金は一定ではありません。したがって今回は、一定の目安として主要な都市(東京都、大阪府、北海道、千葉県)における料金体系を取り上げます。
地方自治体ごとに条例で定められた工業用水料金の一覧は、下記をご確認ください。
東京都の工業水道料金
工業用水及び雑用水(集合住宅を除く) 水道料金
基本料率 | 第一種 | 1m³につき29円 | 基本水量中、井戸を廃止して工業用水に転換した水量の2分の1に適用します。ただし、転換水量が200m³/日未満の場合は、100m³/日までの水量とします。 |
---|---|---|---|
第二種 | 1m³につき64円 | 基本水量のうち、第一種基本水量を除いた水量に適用します。 | |
超過料率 | 1m³につき158円 | 基本水量を超えて使用した水量に適用します。 |
※基本水量…お客さまからの申込みを受け、当局が決定した一日当たりの予定使用水量
※東京都は令和5年3月31日をもって工業用水事業を終了する予定です。
参考:東京都水道局- 工業用水道事業の廃止について(令和4年3月16日時点)
大阪府の工業水道料金
給水料金単価(税抜) | |
---|---|
基本料金単価 | 1立方メートルにつき32.4円 |
使用料金単価 | 1立方メートルにつき10.4円 |
超過料金単価 | 1立方メートルにつき85.6円 |
月額メーター使用料(税抜) | |
---|---|
口径(内径) | 料金 |
50ミリメートルから500ミリメートル | 500円から3,500円 |
501ミリメートルから900ミリメートル | 4,000円から7,000円 |
北海道の工業水道料金
工業用水道の料金単価(1㎥当たり)
基本料金 | 特定料金 | 超過料金 | |
---|---|---|---|
室蘭地区工業用水道 | 18.0円/㎥ | 22.5円/㎥ | 27.0円/㎥ |
苫小牧地区工業用水道 | 20.0円㎥ | 25.0円/㎥ | 30.0円/㎥ |
石狩湾新港地域工業用水道 | 55.0円/㎥ | 68.8円/㎥ | 82.5円/㎥ |
料金種別の定義
料金種別 | 概要 |
---|---|
基本料金 | 基本使用水量(申込水量)に係る料金 |
特定料金 | 期間を限定し、基本使用水量を超えて工業用水を使用する場合、あらかじめ申込みを行うと、超過料金よりも割安となる料金 |
超過料金 | 基本使用水量又は特定使用水量より超過して使用した場合に発生する料金(「限度を超えた量」にではなく、「時間当たりの超過」に対して超過料金が発生) |
引用:北海道企業局工業用水道課ホームページ(読みやすいように一部改変)
千葉県の工業用水道料金(基本料金のみの推移を公表)
工業用水道基本料金の推移(単位:円/立方メートル)
地区 | 当初設定日 | 当初 | S49年4月1日改定 | S52年4月1日改定 | S61年4月1日改定 | H14年4月1日改定 | H26年4月1日改定 | H30年4月1日改定 | 現在 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
東葛・葛南 | H16.4 | 41.00 | 41.00 | ||||||
千葉 | S46.4 | 7.00 | 13.50 | 18.50 | 20.00 | 23.00 | 25.00 | 25.00 | |
五井市原 | S39.4 | 4.00 | 9.00 | 16.00 | 19.50 | 19.50 | |||
五井姉崎 | S42.3 | 5.50 | 9.00 | 14.50 | 17.50 | 17.50 | |||
房総臨海 | S61.4 | 53.00 | 53.00 | ||||||
木更津南部 | S44.4 | 5.00 | 11.50 | 19.00 | 24.00 | 21.50 | 21.50 | ||
北総 | H5.9 | 45.00 | 45.00 |
- 房総臨海地区については、料金以外に10円/m3の経営負担金を徴収しています。
主要な都市を比較しても、超過料金は基本料金の数倍高額であることがわかります。
4.余剰工業用水を転用してコストダウン
多くの工場では、工業用水と上水道を併用して水道料金を節約しています。運営に必要な水のすべてを上水道から使うよりも、安価な工業用水を取り入れた方が、施設にもよりますが年間200万~300万円近くも節約できるためです。
しかし、工業用水には契約水量があり、高額な超過料金を避けるため、多くの工場ではどうしても工業用水が余ってしまいます。
そこで今、その余った工業用水を水道水(飲料水や用水)に変えてコストダウンを図るというアイデアが、注目されています。
工業用水は有害なのか?
工業用水は我々が普段口にする水道水とは異なり、工場などで生産活動時に供給される水のことを指します。普段人体に取り込むことのないトイレの流水や、ビルの冷却、洗浄など用水として使われています。
では、工業用水はそもそも有害だからそのような用途で使われているのでしょうか?
工業用水は、水道水のようにろ過や殺菌などの処理はされませんが、沈殿物は取り除かれているため、決して有害ではありません。
ただし、飲んだとしても死に至るほどの有害性はありませんが、微生物や人体に有害な毒素は残っているので、そのままで飲料水の代わりとして使用することはできません。
工業用水を飲料水に転用すれば料金を大幅に削減できる
工業用水をどうやって水道水に変えることができるのか?と疑問に思う方も多いと思います。
実際には、保健所から専用水道事業認定が認められれば、工業用水を水道水として使うことは可能です。つまり、工場で今まで使っていた工業用水の余った枠を、安全な水質の飲料水に変えて使用することができるということです。
実際にどのぐらいコストダウンできる?
では、今まで上水道と工業用水を併用していた工場が工業用水を飲料化することで、どれだけ水道料金を節約できるでしょうか?
工場の規模や水の使用量によってコストダウンできる料金は変わりますが、水の使用量が多い施設ほど、工業用水の飲料化におけるコストダウンは期待できると言えます。
例えば、東京都の場合、上水道料金は最大で404円/㎥ですが、工業用水だと第一種:29円/㎥、第二種:64円/㎥と1/6~1/14程度の料金になるので、工業用水を上手く活用できると、コストダウンの大きな味方となるのです。
工業用水の飲料水化にかかる費用は?
上水道の代替として工業用水を飲料水化するためには、工業用水を高度浄水ろ過するシステムを用意する必要があります。また本来、設備費や工事費などの初期投資には、多額の費用がかかります。
そこでミズカラ株式会社では、オンサイト方式(※)を採用することで、初期費用なしでの設備導入を可能にしました。
井戸の掘削やプラント費用・基礎工事や配管工事・電気工事など、導入にかかる全ての初期費用をミズカラ株式会社が負担する方式のことです。設備は当社所有になり、お客様は供給される水の使用量に応じた料金を、従量料金としてお支払いいただく仕組みです。
また、契約期間中に発生する毎月のメンテナンス費用・薬品費・ろ過装置のろ過材などの消耗品費、ポンプなどの故障時の修理費に至るランニングコストも全て月々の使用水量1㎥あたりの従量料金に含まれています。
つまり、ミズカラ株式会社のオンサイト方式を活用すれば、
- イニシャルコスト不要
- 水道料金のコストダウン保証
- フルメンテナンス(ランニングコスト込み)
など、多くのメリットをご享受いただけます。
ミズカラ株式会社では、余剰工水や水処理全般に関するお問い合わせを随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。