今回は、少し視点を変えて、”病院”の設備の話をしたいと思います。

皆さんは、”災害拠点病院”をご存知ですか?

災害拠点病院とは、普段は通常の医療機関として患者さんを受け入れている病院なのですが、災害が発生した際は、
被災地からの患者さんの受け入れ及び搬出、医療チームの派遣などの災害医療を行う医療機関としても機能を発揮します。
災害時の医療の拠点となる病院のことですね。
阪神淡路大震災の翌年1996年より整備が始まり、2019年4月までに全国で742病院が指定されています。

なお、”災害拠点病院”という名称ですが、地震や津波、台風などの自然災害発生時だけでなく、航空機の事故など重大事故のような緊急時でも、傷病者の受け入れを行っています。

今回は、災害拠点病院の指定要件の改正が検討され、耐震整備、停電や断水対策の強化、業務継続計画の整備及び計画に基づいた訓練などの
新要件が追加、義務化されることについて、触れていきたいと思います。

災害拠点病院の主な指定要件とは

まず、災害拠点病院は大きく分けて2つに分けられます。
それは、

  • 基幹災害拠点病院・・・地域災害拠点病院の機能を有するほか、県下全域の災害拠点病院の機能を強化するための訓練・研修機能を有する病院であること。
    各都道府県に、原則1カ所以上配置されています。
  • 地域中核災害拠点病院・・・広域二次救急医療圏の中核医療機関として、当該地域の災害拠点病院のとりまとめのほか、
    当該地域の災害医療体制を強化する機能を有する病院であること。
    原則として、二次医療圏に1カ所以上配置されています。

次に、”災害拠点病院”と指定される医療機関の主な要件について見ていきます。

災害拠点病院としての主な要件

災害拠点病院の指定要件は細かく定められているのですが、主な要件は、以下のようなものがあります。

  • 24時間いつでも災害に対する緊急対応でき、被災地域内の傷病者の受け入れ・搬出が可能な体制を持つ。
  • 実際に重症傷病者の受け入れ・搬送をヘリコプターなどを使用して行うことができる。
  • 消防機関(緊急消防援助隊)と連携した医療救護班の派遣体制がある。
  • ヘリコプター搬送の際には、同乗する医師を派遣できることに加え、自己完結型で医療チームを派遣できる資器材を備えていること。

引用元:災害拠点病院とは – 災害医療 – 独立行政法人 国立病院機構 災害医療センター

他にも、
「衛生電話の保有、衛星回線インターネットが常時利用できる環境」
「通常時の入院患者数2倍、外来患者数5倍の人数に対応可能なスペースの確保」
「適切な容量の受水槽の保有」など、
施設及び設備についての要件も多く指定されています。

実は、上記の要件に加えて、電源や供給水の確保のための要件の追加・見直しが決まっていることをご存知ですか?
その追加要件について、見ていきましょう。

なぜ、災害拠点病院の指定要件が改正されることとなったのか

”災害拠点病院”であるためには、上記で提示したような要件を満たしていることが必要となるのですが、
実は、この指定要件の改正が、現在検討されています。

そこで、何故、災害拠点病院の要件の見直しが検討されることになったのか、その背景を見てみましょう。

これまでにも災害拠点病院の指定要件は、必要に応じて見直されてきましたが、
今回の改正は主に、2018年に発生した北海道胆振東部地震、また西日本豪雨などの大規模災害による被災状況から、
災害拠点病院に関する自家発電設備、及び給水設備の緊急点検の結果によるものも大きく影響していると考えられます。

先の大規模災害後の緊急点検の結果、
災害発生時、診療機能を維持するために必要な電力、水の確保が自力でできないおそれ」のある病院が、多数あることが判明しました。
つまり、災害拠点病院の認定を受けている医療機関であっても、ライフラインが断絶した状況では、
3日間の診療機能を維持することが困難であり、
災害拠点病院としての機能を保つためには、
自家発電機や給水設備の増設などが必要であるということです。

もちろん、この結果だけが改正の要因ではありませんが、より具体的な対策が必要であると捉えられ、
災害拠点病院の指定要件の見直しが実施されることになりました。

そして、この事実を踏まえ、医療機関の自家発電機や給水設備の導入の必要性が叫ばれています。
これは、災害大国日本の急務とも言える対策の一つだと言えるでしょう。

水を中心としたコストダウンと省力化と防災対策

災害に強いライフラインの整備が急務

厚生労働省が公表した平成31年度予算案の概要には、災害拠点病院の指定要件の見直しを踏まえ、
災害拠点病院等の耐震化整備、給水設備強化、非常用自家発電設備整備などに対し、43億円の予算が充てられるとされています。
電源や給水設備、耐震化構造などの体制が整っていない災害拠点病院では、
こうした予算を活用して、体制の整備を早急に進める必要があるでしょう。

阪神・淡路大震災発生後、診療機能を低下させた最も大きな原因は、断水によるものだったと言われています。
断水のため、治療や手術ができずに亡くなった方もいらっしゃいました。
まさに、ライフラインの整備・確保は、病院の生命線なのです。

今回は、災害拠点病院の指定要件の見直しについて、簡単に記述しました。
次回はもう少し深堀りしたいと思います。
次回の記事も、お楽しみに!

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