工場や一般家庭から排出される排水が正しく処理されないと、河川や海、地下水を汚染し、環境や私たちの生活にも悪影響を及ぼします。
とは言ってもどのような悪影響があり、また排水による水質汚染を防ぐためにどのような取り組みがなされているのか、
今回はできるだけ分かりやすく、各項目に分けて説明したいと思います。
排水による悪影響の被害の程度や、水質汚染を予防するためにどのような法令があるのかを具体的に知ることができれば、
より環境問題に対して主体的な視点を持てるようになると思います。
目次
排水を適切に処理しないと危険
私たちは日々、水を使ってその水を下水に流していますが、その排水は、水質汚染の原因の1つになっています。
水質汚濁に影響しているものの内訳は、工場排水ならびに家庭用排水の2つが代表的なものです。
ここで見ていただきたいのが、工場排水ならびに、生活排水の中に含まれている有害物質と基準値の一覧です。
上記の一覧表が示す通り、非常に多くの有害物質が、工場排水・生活排水の中に含まれていることが分かります。
適切に処理しないと、環境や我々の生活へ大きな影響をもたらしかねません。
排水による水質への主な影響
有害物資を含んだ排水が流出すると、河川水や海水、地下水に大きな悪影響を及ぼします。
特に、地下水に有害な排水が浸透すると長期間にわたり影響があるとともに、
ある成分では多量の硝酸態窒素が蓄積され、我々人間が口にする農作物にも悪影響を及ぼします。
一例ではありますが、地下水汚染による影響を表で見てみましょう。
件数の割合として半数以上は我々の生活において大きな悪影響とはならずに済んでいますが、
それでも40%近くは何らかの悪影響を及ぼしており、中には農作物などに使用する水にまで影響が出ている前例があります。
このことに気づかずに、汚染された農作物を口にしてしまうことを考えると、
排水による地下水汚染は他人事とは到底思えませんね。
我々の生活をより安心できるものにするためには、これらの有害物質を取り扱う、
特定事業場に指定されている工場等の施設の排出を適切に処理し、できる限り低減することが求められます。
排水は適切な処理によって
では、有害な物質が含まれている排水を低減するためにどのような取り組みが存在するでしょうか?
水質汚濁防止法
代表的な工場排水の処理を適正化するためのものとして、昭和46年に施行された水質汚濁防止法と言うものがあります。
目的は、
工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出及び地下に浸透する水の浸透を規制するとともに、生活排水対策の実施を推進すること等によつて、公共用水域及び地下水の水質の汚濁(水質以外の水の状態が悪化することを含む。以下同じ。)の防止を図り、もって国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに工場及び事業場から排出される汚水及び廃液に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする。
となっており、簡単に申し上げると
”工場などの事業場から排出される排水による悪影響が私たちの普段の生活に及ばないように取り組み、
健康的な生活を送れるように生活環境を乱さないようにしましょう”
と定められていて、もしルールを守れなかった場合には規制項目に則って処罰しますよ、ということです。
具体的な法令の項目として、規制されているものを簡単にご紹介します。
排出制限
水質汚濁防止法は排出水を排出する者に対し、故意・過失を問わず違反者に対して刑罰を科せられることとなっている。
違反したものに対して以下で紹介する処置を執行できます。
改善命令・一時停止命令
都道府県知事は排出制限に違反する恐れのある者に対して施設の構造変更や使用・処理の改善命令・一時停止命令を出すことができます。
設置・変更の届出、計画変更命令
必要な措置を事前に講じさせるために、特定施設を新たに設置又は構造等の変更をしようとする者は、
あらかじめ(60 日前まで)、管轄都道府県知事に所定の事項を届けなければなりません。
そして、排水基準を満たしていない場合には、届け出を受理してから60日以内であれば、
計画の変更、廃止を命ずることができます。
測定義務、立入検査
排出水を排出する者は、排出水の汚濁負荷量を測定しその結果を記録しておかなければならない。
また、都道府県職員は、排出水を排出する者が排水基準や総量規制基準等を遵守しているか調査するために、
特定事業場に立ち入ることや必要な事項の報告を求めることができる。
事故時の措置
特定事業場において、特定施設の破損その他の事故が発生し、有害物質が排出され人の健康に影響が及ぶ恐れがある場合は
直ちに予防策を講ずるとともに、速やかにその事故の状況及び講じた措置の概要を都道府県 知事に届けなければなりません。
特定事業場以外で貯油施設を保有している場合も同様の処置が必要。
都道府県知事は、特定事業場等の設置者か事故時の措置を講じていないと認めるときは、
これらの者に対し、これらの規定に定める応急の措置を講ずべきことを命じることができる。
緊急時の措置
異常な渇水等により公共用水域の水質汚濁が著しく(政令で定めるレベル)なったときは、
都道府県知事は、一般にその事態を周知させる。
また、その事態が発生した当該一部の区域に排出水を排出する者に対し、期間を定めて、
排出水の量の減少その他必要な措置を執るべきことを命じることができる。
SDGs目標 6:すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する
SDGsの目標6でも、安全な水の確保における目標が設定されています。
世界的に見ると、工場の排水が川や湖、海に流れ込んだり、有害な物質が染み込んだ土地の地下水を口にしたりすることにより、
健康を害している人々が、現在でもたくさんいます。
今の日本では考えられませんが、上下水道が十分に行き渡っておらず、
トイレなどの基本的な衛生施設を利用できない人の数が、なんと24億人以上も暮らしていると言われています。
さらに、糞便で汚染された飲料水を使用しなくては生きていけない人々が、約18億人いる現状があります。
この事実に関してはあまりにも規模が大きいため、イメージができないのもまた事実です。
しかしながら、この事実を他人事として見過ごすわけにはいきません。
というのも、今後水不足は世界人口の40パーセント以上に影響を及ぼし、増加すると予測されています。
その中に日本が入り込む可能性は極めて低いとは言え、ゼロではない限り他人ごとにするのは無責任です。
私たち日本人も水の大切さをきちんと理解して、蛇口をひねれば綺麗な水が手に入るという環境に感謝すべきです。
日常的なものに対して感謝するということは、SDGs達成の前に一人の人間として当然のことですね。
その上で企業がなすべきこととして、事業を運営する上で有害な水を排出しないこと。
できうる限りの正しい処理を施すこと。
最近は技術も向上し、排水リサイクルも一般的となってきました。
サステナブル(持続可能)な社会を作っていくという目標は、企業の責務無くしては実現できません。
新しい技術と今まで以上に社会貢献を意識して参ります。
出典元:SDGsジャーナル【SDGs支援機構】