前回の記事では、国際的なSDGsの取組み方を参考にして、企業としてどのように活動していくべきなのかを検証し、宣言しました。
その際、当社のSDGsアクション宣言のステップ2(課題決定)に対する当社の取組み方針を下記の通り宣言しています。
この「マッピング」を進めるにあたり必要だと当社が考えたのが、「具体的な数値目標」です。
企業活動をする上で、会社・部門・個人においてKPIなどの具体的な数値目標の設定は重要ですが、
SDGsの活動においても同じことが当てはまるでしょう。
その数値目標や指標(Indicator)について、今回は深堀りします。
目次
SDGs【17のゴール(Goal)】を改めて振り返る
まずはSDGsのおさらいです。
「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」といえば、【17のゴール・169のターゲット・232の指標】から成り立っており、
そのうち最も目にする機会が多いのは、”17のゴール”でしょう。
それぞれのゴールの内容については、総務省が公開しているWebサイトをご参照ください。
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/kokusai/02toukatsu01_04000212.html
では、「ゴール」の定義とは何なのでしょうか?
実は、国際社会において、「何がゴールなのか」は正式には定義されていません。
(外務省地球規模課題総括課様に確認済。国連及び国連広報センターに問い合わせ中も、回答未受領。)
各国の「自主的な」取り組みが期待されているのがそもそものSDGsですので、
この現状を踏まえると、各企業・各個人が強く主体性をもって前のめりになるくらいの姿勢でいる方が、
適切なSDGsアクションの姿勢と言えるかもしれません。
【ゴール】は明確にはなっていませんが、上記17のゴールの内容は、次のように考えることができます。
– 2030年までに持続可能でより良い社会を目指す国際目標の達成
– 誰一人取り残さない、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため、2030年を年限とする17の目標の達成
– 持続可能な開発目標の達成
参照元:TRANSFORMING OUR WORLD:THE 2030 AGENDA FOR SUSTAINABLE DEVELOPMENT
https://sustainabledevelopment.un.org/content/documents/21252030%20Agenda%20for%20Sustainable%20Development%20web.pdf
SDGs【169のターゲット(Target)】とは
次に、多くの企業が着目していると思われる「ターゲット」についてですが、こちらも国際社会において正式に定義はされていません。
ターゲットに関しては、外務省が公開しているSDGsアクションプラットフォームを参考にしてみたいと思います。
JAPAN SDGs Action Platform | 外務省https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/index.html
お気付きのように、ターゲットには、「6.1」のように数字だけのものと、「6.b」のようにアルファベットを含むものがあります。
まずは、これらの違いを把握しましょう。
数字 | 「保護・回復を行う」「平等なアクセスを達成する」「脆弱性を軽減する」「海域の10%を保全する」「強靭性及び適応能力を強化する」「食糧の損失を減少させる」といった文言が並ぶ |
アルファベット | 「支援・強化する」「法規を導入・強化する」「改革に着手する」「アクセスを提供する」「大幅な増額を行う」「相当量の資源を動員する」といった文言が並ぶ |
これらを加味すると、以下のように考えることができるでしょう。
アルファベット含むターゲット:具体的な実施手段
SDGs【232の指標(Indicator)】とは
最後に、232(重複を複数回カウントすると244)の項目から成る「指標」についても定義付けをしてみたいと思います。
指標は、下記の国連が公開しているWEBページに最新版が掲載されています。
IAEG-SDGs:https://unstats.un.org/sdgs/iaeg-sdgs/tier-classification/
まず初めに、指標は”グローバル指標”と呼称されているようですが、
これは、国際社会において全体的に適用可能な測定方法だからだと考えられます。
そして、このグローバル指標の定義ですが、
外務省からの回答(非公式にはなりますが)を基に、以下のように考えていきたいと思います。
– ターゲット達成のための進捗状況を測るための基準
– ターゲットの達成度の測り方
– ターゲットの進捗管理方法
TierⅠ、TierⅡ、TierⅢとは
先ほどの国連が公開しているサイトにて、目にされた方もいらっしゃるかと思いますが、
「Tier(ティア)」という言葉が出てきます。
日本語で要約すると、
その指標は、明確かつ定期的にデータ作成されているもの。
Tier 2:
その指標は、明確だが定期的にデータ作成されていないもの。
Tier 3:
確立された方法論、もしくは基準が開発中、または試行中。(第51回国連統計委員会の時点では、グローバル指標枠組みにはTier IIIは含まれていない)
IAEG-SDG:https://unstats.un.org/sdgs/iaeg-sdgs/tier-classification/
それぞれ、上記のような意味合いになります。
2020年7月17日の更新によって、TierⅢの該当指標項目がなくなり、
全ての指標がTierⅠ、またはTierⅡ、またはその両方に該当することになりました。
つまり、現時点では全てのグローバル指標について、
「概念的に明確であり、国際的に確立された方法論と基準が利用可能」とされていることとなります。
今後も随時更新される可能性がありますので注視する必要はありますが、
ゴールやターゲットの測定方法が一旦全て明確になりましたので、
国際社会でのSDGsの取り組みは、より一層加速するでしょう。
”定義”とは
外務省が公開しているJAPAN SDGs Action Platformでは、日本におけるグローバル指標への測定方法であり、日本国内のデータに対する「定義」が記載されています。(*1)
例えば、ゴール6.のグローバル指標6.1.1には、定義として「水道事業により給水されている人口の割合」のデータが記されています。
JAPAN SDGs Action Platform | 外務省https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/index.html
(*1)総務省政策統括官(統計基準担当)付 国際統計管理官室に確認済(2020年7月27日)
「Tier」は国際的な取り決めであるのに対し、「定義」は日本国内向けに作成されているようです。
2020年8月末時点でのグローバル指標は、前述の通りTierの区分においてはⅠかⅡのどちらかに全て当てはまります。
つまり、「すべてのグローバル指標は概念的に明確であり、国際的に確立された方法論と基準が利用可能」です。
しかし、国内用である「定義」については、グローバル指標によっては「定義されていない」項目があります。
基本的に国際的な取り決めの後に、時間をおいて日本国内での諸事項が決定する流れとなっていますので、
グローバル指標の測定方法についても同様でしょう。
つまり、日本においても国際的なTier Classificationに準ずる形で、
今後「定義」される指標項目が増えるかと考えられます。
定義されていない指標:日本でのデータに対する測定方法が決まっていない
定義されている指標:日本でのデータに対する測定方法が決まっている
ゴール・ターゲット・グローバル指標・Tier・定義の関係
ここまでで出てきた5つの言葉【ゴール・ターゲット・グローバル指標・Tier・定義】を可視的にまとめると、
「図1.SDGsの構造」のようになるでしょう。
最も抽象的な表現である”ゴール”を、”ターゲット”として具体化することでビジョンや目標を設定します。
そして”グローバル指標”および”定義”によって決められた進捗状況の測定方法を用いて、
PDCAサイクルにおいて疎かになりがちな管理・検証の過程を明確にしているのです。
このピラミッド構造に、例としてゴール6の一部を当てはめてみた図が「図2.SDGsの構造(例)」です。
グローバル指標としては測定方法が明確になっている6.b.1ですが、
日本では測定方法が明確になっていない現状などがわかります。
5つの言葉が示すことをまとめると
今回の記事から言葉の意味をまとめると、下記の通りとなります。
ターゲット:ゴール達成のための具体的な目標や数値を表したもの。具体的なゴールおよび具体的な実施手段を示したもの。各ゴールを具体化したもの。
グローバル指標:ターゲット達成のための進捗状況を測るための基準。ターゲットの達成度の測り方。ターゲットの進捗管理方法。
Tier:国際的に確立された方法論と基準の利用が可能かどうかと、データを定期的に作成されているかどうかによって、各グローバル指標を3段階に分別したもの。
定義:日本国内でのターゲットの達成度の測り方。
当社としては、取り組みの達成度を測ること(数値化すること)を強化したいと思っております。
そこで、日本国内において「定義」されているグローバル指標に対して、
明確な数値目標を設定した上で、事業活動にSDGsを統合して参ります。
前回の記事で宣言した内容と併せまして、
当社は今後も経済活動に環境や社会の側面をしっかりと考慮したSDGsアクションに力を入れていこうと思っています。
国として、企業として、個人として。
できることを、少しづつ。
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