正しく恐れるPFAS — 不安に振り回されないために、まず知っておきたいこと

ここ数年で、ニュースやSNSで「PFAS(有機フッ素化合物)」という言葉を見かける機会が増えました。
フッ素コーティングのフライパン、防水スプレー、化粧品、さらには半導体の材料まで、私たちの身近な製品に幅広く利用されている物質です。

しかし、上述されるように役に立つ一方で、体内に取り込まれると分解されにくく、蓄積することで発がん性など健康への影響が懸念されています。
特に、水に含まれる場合は味や匂いもなく、気づかないうちに摂取してしまうのでは…という不安も生まれます。

SNSでは“最も強い表現”が拡散されてしまいがちです。しかしながら、「正しく恐れる」とは、不安を助長するような話だけを集めることではありません。
信頼できる一次情報を軸に、落ち着いて状況を捉えることが重要です。

研究は進んでいる——だからこそ「整理」が大切

PFASの研究は世界中で進んでおり、膨大な数の論文や報告が存在します。

ただしその内容は一様ではなく、

  • ごく微量でも健康被害を示すとするもの
  • 他の要因も関与しているとするもの

など、見解が分かれているのが現状です。

このような中で、最も危険性を強調する説だけを取り上げて「陰謀論」や「不安」を煽る論調も、SNSでは目立ちます。
普通に暮らしたい人にとっては、どう対応すれば良いのか不安になるのも当然ですね。

科学的知見に基づいた安全基準

実は、水処理の分野では、新たなリスクに対して科学的に対応していくことは日常的に行われています。
その成果の積み重ねが「水質基準」なのです。
PFASについても、内閣府食品安全委員会が世界中の研究を精査し、PFOS・PFOAともに体重1kgあたり1日20ng以下であれば、”生涯にわたって摂取しても健康に影響が出ないと推定される量”と結論づけられています。
さらに既存データに基づく国内での推定摂取量は、PFOSで0.6〜1.1ng/kg日、PFOAで0.066〜0.75ng/kg日と、基準を大きく下回ると報告されています。

参考:「有機フッ素化合物(PFAS)」評価書に関するQ&A(2025年7月18日)」 | 食品安全委員会

また、水道法改正により、2026年4月から、水道水にはPFOS+PFOAの合算50ng/L以下という水質基準が新設されます。
水道事業者にはおおむね3か月に1回の検査が求められ、これが当面の「実務のものさし」になります。
公共用水域や地下水でも合計50ng/Lの指針値が示されました。

つまり、「どのくらいなら大丈夫?」に対して、国としての基準と検査の頻度が明確になった、ということです。

参考:水質基準に関する省令の改正について | 環境省

基準はこうして決まる

こうしたルールは、次のようなステップで慎重に決められています。

  1. 知見を集める:国内外から信頼できる研究・データを広く収集

  2. 専門家による評価:評価書や素案を作成(食品安全委員会など)

  3. 実効性と社会的な影響を確認:行政が運用面やコスト、現場の実行可能性を検討

  4. 一般公開し意見募集パブリックコメントで市民や事業者の声も反映

行政の専門家や市民の目を通じて多面的に検討された基準は、SNSで拡散される噂よりもはるかに信頼できるものと言えるでしょう。
なお、今回の水質基準でも、改正案に対して2,000件を超えるパブリックコメントが提出されています。

参考:「水道における水質基準等の見直しについて(第1次報告案)」及び「水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の見直しについて(第7次報告案)」等に関する意見の募集(パブリックコメント)の実施結果について|e-Govパブリック・コメント

「ゼロリスク」を追いかけすぎない

もちろん「リスクがゼロではない」と感じる方もいるでしょう。
しかし「ゼロリスク」を追い求めるあまり不安を煽り、日常生活を過度に制限してしまうこと自体もまた、社会的リスクのひとつです。
だからこそ大切なのは、信頼できる情報を正しく理解し、必要以上に恐れないこと
不安を感じたら、まずは公的機関の情報を確認してください。
わからない点があれば役所に相談することもできますし、水処理会社も専門的な視点からご相談に応じています。

迷ったときのシンプルな指針

まとめ

PFASは確かに注意すべき物質ですが、科学的な知見に基づいて管理され、社会全体で安全を守る仕組みが整いつつあります。
「正しく恐れる」ことが、安心して暮らすための第一歩です。

また井戸水や河川水、工業用水に含まれるPFASの除去、水処理についての対策はミズカラ株式会社にご相談ください。

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