工場からの排水には多くの有害物質が含まれています。この排水を何も処理しないまま河川や海、湖、地下水へ流出させると、どうなるでしょうか?
自然環境や私たちの生活に悪影響を及ぼしてしまうことは、想像に難くありません。工業生産において世界的にも大きく貢献している日本にとって、排水処理は非常に重要な責任です。
日本も工業の発展に伴い、産業廃棄物や工場排水などの処理技術を進化させ続けてきました。そして今日では、非常に高度な排水処理の技術を確立させ、高いレベルで工場排水の浄化に成功しています。
そこで今回は、工場排水による水質汚染の影響と、工場排水の適切な処理方法をご説明します。
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目次
排水による水質の汚染の実態
私たちは日々、生活の中でも仕事中でも、何気なく水を使っています。
さらに、私たちが口にしている食べ物や、使っている製品が製造される過程でも、多くの水が使用され、その使用後の水は排出されています。
その水は下水として流れていますが、水質汚染の主な原因の1つです。
水質汚染に影響しているものの内訳は、工場排水ならびに家庭用排水の2つが代表的なものです。
下記の表は、排水中に含まれている主な有害物質と、その有害物質を排水する場合の許容限度の一覧です。
引用:水質汚濁防止法排水基準等について|東京都環境局
上記の一覧表が示す通り、多種多様な有害物質が、工場排水の中に含まれていることが分かります。適切に処理しないと、環境や我々の生活へ危険をもたらしかねないのです。
工場排水による水質汚染の影響力
今回は、より適切な処理が求められる工場排水の水質汚染について、言及します。
まずはじめに、過去に工場の発生した不適切な排水処理による、水質汚染の事故例をご覧ください。
ここで取り上げたい重要なポイントは、工場で取り扱っている有害物質を含んだ排水を、適切に処理しないまま河川や海に流出すると、甚大な被害が現れてしまうという点です。
被害の状況として、約8,900世帯にも及んで断水を余儀なくされ、また、汚染された水を実際に口にしてしまった人は、下痢などの体調不良を引き起こしています。
さらに、水路に流れているということは、農作物にまで悪影響が及ぶ可能性があるということがわかります。
そのため、有害な排水が流出した地域だけでなく、その近辺で育った農作物を口にしてしまうことで、より広範囲に渡って人的被害が及ぶ可能性もあり得るのです。
ここで紹介した水質汚染事故は、排水処理不足が原因で起きた事故ではありませんが、排水を適切に処理できていないと、これだけ大きな被害につながるということは明らかです。
排水の適切な処理方法を見てみよう
水質汚濁防止法に基づき、有害な物質を取り扱う事業場では工場や事業場では、適切な排水処理を施すよう推進し、公共用水域への工場排水の流出を規制しています。
適切な処理を行い、水中に存在する粒子や溶解物質を水から除去、反応、消化などさせることで、定められた排出水の基準に適合していなくてはならないのです。
では、工場排水を適切に排出するには、一体どれだけ浄化、つまりキレイにしたら良いのでしょうか?
排出水にも水質基準が定められている
水質汚濁防止法では、排出水の水質基準が定められています。
「汚染水をそのまま垂れ流しにするのではなく、ある程度キレイにしてから流しましょうね」という定めです。違反した場合は、罰則があります。
どの程度キレイにしたら良いのかというと、先ほども掲載しましたが、下記の表が、工場排水に含まれる有害物質とその許容限度(基準値)の一覧になります。
飲料水にも水質基準項目と、その基準値がさだめられていますが、排水にも同じように基準値があるのですね。
ちなみに、十分な水処理を施すことで、排水を飲料水として再利用することも、実は可能です。
水処理のプロセス
これだけの工数をかけて水処理をすることで、汚染された工場排水を我々が普段から使用している水道水として、再利用することができるようになるのです。
この技術力の高さは、世界的に見ても非常に高度だと言えます。世界に誇れる技術力ですね。
ちなみに日本の水資源管理技術は世界TOPレベルとされており、全世界の水質基準の底上げに貢献しています。
自然環境への影響を考えた適切な排水処理に取り組もう
工場排水はそのままの状態では、環境を破壊する原因となってしまいます。
そして、その環境破壊の延長線上には、人間である私たちの生活にもつながっています。
この事実を率直に受け止め、排水処理はプロダクトを作り上げるのと同様に、重要であるという認識を強く持っていきましょう。