日本は水に恵まれているとよく言われます。

「水と安全は無料」という意識が日本人にはあると感じていらっしゃる方も多いかと思います。
たしかに、”浪費”を表す慣用句に”湯水のごとく使う”という表現があることからも、日本では昔から水が豊富であったことがうかがえます。

しかし、いつの頃からか治安の悪化や安全の自己責任といった意識の変化から、安全にもコストが発生するようになり、
また同じように飲料用として使える水道水が豊富にあるにも関わらず、飲料水としてペットボトルの水を購入するようになり、
「安全と水はお金を払って手に入れるもの」という認識に変化していきました。

ここで興味深いデータをご覧いただきたいのですが、日本の年間降水量は世界平均の約2倍あと言われています、一方で、実は国民1人あたりの降水総量で見ると、世界平均の約1/4にしかなりません。水に対して不自由を感じにくい日本ではありますが、国民1人あたりに割り振られる水の量は、世界の人々よりもだいぶ少ないのですね。

年間降水量
日本の平均世界の平均
約1,700mm約900mm
国民1人あたりの降水量
日本の平均世界の平均
約5,000㎥約22,000㎥

参照:国土交通省資料https://www.mlit.go.jp/river/dam/main/shinngikai/kondankai/dam/pdf2/28-59.pdf

ところで、海外旅行に行くと先進国、途上国に関わらず、水が不味い、あるいは生水が飲めないといった話をよく耳にします。生水が飲めないのは衛生上の問題も大きいのですが、水の味に関しては硬度成分の違いが大きく作用しています。
諸外国でワインやコーヒーが好まれるのはこうした水の事情によるところが大きく、その強い香りと味で水の不味さをカバーする意味合いもあるという説があります。
面白いものですね。

日本と比較すると外国は、そのままでは飲めないような硬水が多く、その水を料理に使えば硬度成分であるマグネシウムやカルシウムといった硬度成分がタンパク質を高くし、味を不味くしてしまいます。

そのため西洋料理では、料理に水を使わず、ワインや牛乳をたっぷり使用します。
似たような食材を使った鍋料理でも、ただの「水」を使った和食(寄せ鍋やちゃんこ鍋)より、ワインや牛乳を使った西洋料理(ブイヤベースやシチュー)の方が、一見豪華で高級な印象を受ける人も多いかもしれませんが、料理に使用しても味に影響しない水なのか否かの違いであり、そのままで料理に使える水をたっぷり使った日本の鍋の方が、西洋から見ればずっと高級で豪華な料理なのかもしれません。

そういえば西洋では、ワインやビール、ジュースよりも飲料水の方が値段が高いという話もよく耳にしますね。

水栓をひねれば簡単に飲み水も料理に使える水も手に入り、また飲料水を洗車にも使える国は世界でも稀であり、日本が水に恵まれていることは、豊富であること以上に、その水の「質」なのかもしれませんね。

ちなみに、日本の水は、一部の地域を除き一般的には軟水です。赤ちゃんのミルクを調乳するには、軟水の方が適しているそうですよ。硬水は、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれていますが、赤ちゃんのミルクには既に十分な栄養成分がしっかりと調整されて作られているので、必要以上にミネラルを摂取してしまうと、赤ちゃんの内臓に負担がかかってしまうことがあるためです。軟水は赤ちゃんのミルクとも相性が良いのですね。

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